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【医療情勢】ジェネリック医薬品の普及、さらに拡大へ
目次
ジェネリック医薬品の使用割合が増える模様
平成25年4月、厚生労働省は、「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を発表しました。これはジェネリック医薬品の使用促進を取り組みとしてまとめたものです。概要版には大きな目標として「後発医薬品の数量シェアを平成30年3月末までに60%以上にする」、「後発医薬品のさらなる使用促進のための取組についてもモニタリングを行い、その 結果を踏まえ必要な促進策を適宜追加する 」の2点を掲げています。
厚生労働省は、平成19年に策定した「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」では、昨年度までに3割のシェアを目標としていたのですが、結局は25.6%にとどまってしまいました。今回のロードマップではその点を踏まえた目標設定となっています。
今後はジェネリック医薬品への切り替え活動がより盛んになると思われます。皆さんはすでにジェネリック医薬品を利用されていますか。
後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ(概要)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002z7fr-att/2r9852000002z7h8.pdf
患者さんにとってジェネリック医薬品を使う最大のメリットは医療費が安くなることでしょう。日本ジェネリック製薬協会のウェブサイト では、実際に先発品との金額差額を調べることができます。例えば、肺がんや、すい臓がん、乳がんなどで使われているジェムザール(カルボプラチン)を例にして実際に計算してみると…
ジェムザールの容量・用法は下記のように添付文書に記載されています。
1.非小細胞肺癌、膵癌、胆道癌、尿路上皮癌、がん化学療法後に増悪した卵巣癌、再発又は難治性の悪性リンパ腫の場合:ゲムシタビンとして1回1000mg/㎡を30分かけて点滴静注し、週1回投与を3週連続し、4週目は休薬する。これを1コースとして投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。
2.手術不能又は再発乳癌の場合:ゲムシタビンとして1回1250mg/㎡を30分かけて点滴静注し、週1回投与を2週連続し、3週目は休薬する。これを1コースとして投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。
たとえば、あるがん患者さんの場合ですと、1000mg×3で1セットの使用量となりますので、この用量で計算をしてみましょう。計算結果は、先発品の薬剤費が66,555円となり、ジェネリック医薬品は(ゲムシタビンとして数社が販売していますので、薬価にばらつきがあります)の最安値が38,940円となり、最大で27,615円の差額が1ヵ月ででることになります。通常では数セットの治療を行いますので、毎月これだけの治療費が節約できることになります。
患者さんの負担額で考えますと、3割負担の場合は最大で8,285円の節約ができることになりそうです。
【 薬剤費 】 | |
---|---|
先発医薬品 | 66,555円 |
ジェネリック医薬品 | 38,940円 ~ 47,535円 |
差額(3日) | 27,615円 ~ 19,020円 |
【 窓口負担 】 | ||
---|---|---|
3割負担 | 1割負担 | |
先発医薬品 | 19,967円 | 6,656円 |
ジェネリック医薬品 | 11,682円 ~ 14,261円 | 3,894円 ~ 4,754円 |
差額(3日) | 8,285円 ~ 5,706円 | 2,762円 ~ 1,902円 |
3割負担だけでなく、薬価全体で金額を比較すると、患者さん自身のためだけでなく、財政運営が困難な国の医療費にも大きく影響を与えそうです。ロードマップの中にも、「国民が後発医薬品を使用することにより、自己負担の軽減だけでなく、医療費全体の抑制、ひいては患者自身の保険料等の負担軽減となる後発医薬品の促進の意義への理解が不足しており、後発医薬品の促進の意義、メリットについて、保険医療機関、保険薬局、国民に対してさらなる理解の促進が必要である。」と記述があり、国民一人ひとりが医療費全体を意識することも望まれています。
ジェネリックの薬価をさらに下げるよう検討が進む。
ジェネリック医薬品の薬価を議論する「中央社会保険医療協議会薬価専門部会」では、次期の薬価制度改革に向けて検討が進んでいます。11月の13日の会議では、患者さんの意見として「金額が安くなると言っているが、実際にはそんなに変わらないと思う。
薬の内容や効果が変わらないはずなのに、なぜ価格にばらつきがあるのかが理解できない。」との指摘がされ、先発品の半額程度での値下げと、同じ薬なのに販売会社が異なると薬価に差がでる点などが検討課題としてあがり、引き続き議論されることになっています。
注目されるバイオシミラー、がん治療に使う薬も承認される。
後発品の中でも、最近注目されているのがバイオシミラーです。バイオシミラーは、先発品の中でもバイオ医薬品の分子構造が複雑な薬をシミュレーションして作るものです。いままでのジェネリック医薬品のような低分子ではないために、複製が難しいとされています。そのために新薬の申請資料に準ずる調査と資料の提出が求められています。
主には品質、安全性、有効性などが先行品と同等か、同質性が認められるのかが問われます。非常に承認のハードルが高い薬といえるでしょう。最近ではフィルグラスチム(G-CSF)のバイオシミラーが発売されました。G-CSFは抗がん剤の治療中に好中球減少症に用いられている薬です。
がんを治療中の方には、先発バイオ医薬品からバイオシミラーに変更を検討しているかたもいらっしゃると思います。使われる場合には医師と十分に相談してから切り替えを検討しましょう。
カテゴリー家族と社会のがん闘病サポート, 医療制度・社会制度の活用
タグ2013年12月
※掲載している情報は、記事公開時点のものです。