【QOL(生活の質)】家族ができる、床ずれ予防と在宅ケア

公開日:2013年08月01日

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こまめな体圧分散で事前予防

jukusouがんの療養中、ベッドの上で過ごす時間が長くなってきた際に気を付けたいのが「褥瘡」(じょくそう)です。褥瘡は「床ずれ」とも言って、ベッドや布団、いすなどと接触する皮膚が壊死し、強い痛みを発する状態のことを指します。同じ場所に体重がかかることによって血流が悪化し、皮膚やその下にある組織がダメージを受けることによって生じます。

健康な状態であれば、適度に寝返りを打つことで、一カ所に体重がかかることを避けられますが、がんの症状が進むと、それが難しくなります。身体の痛みやむくみ、麻痺などによって同じ姿勢のまま寝ることが多くなるからです。また、十分に食事を取ることができずに栄養状態が思わしくなかったり、抗がん剤などの使用によって体力が落ちたりしている状態の時にも、褥瘡のリスクは高まります。
一度できた褥瘡がなかなか治らず、悪化してしまいやすいため、事前の予防が大切です。

患者さんのご家族にできる褥瘡予防としては、まず耐圧の分散があります。イラストをご参照ください。褥瘡ができやすい部位はだいたい決まっており、骨の出っ張った部分、脂肪の少ない部分などです。仰向けの場合は、お尻の少し上にある仙骨(せんこつ)や、肩にある肩甲骨(けんこうこつ)のあたりと、ひじやかかとなどの間接です。横向きの姿勢では、大転子(だいてんし)といって体重のかかる腰部分、もしくは肋骨の当たる側胸部は特に注意したいところです。

こうした部位になるべく体重がかからないよう、こまめに体位を変えるようにしましょう。目安は2時間に1回、患者さんに声を掛けながら、姿勢に違和感がないかどうかを確認しながら体位を交換します。また、身に着ける衣類にも配慮が必要です。パジャマや下着のゴムがきついものは避け、ゆとりのあるサイズを選びましょう。おむつを使用している場合は、テープをきつく締めると腰や太ももが圧迫されることがあるため、適度に調整するように意識することが大切です。

身体の下にクッションを敷いたり、耐圧を分散させる専用のマットレスを使ったりする方法もありますが、患者さんの状態によって使い方が異なります。医師や看護師によく相談し、じょうずに活用しましょう。

入浴後はしっかり水分を拭き取り、保湿を忘れずに

耐圧の分散と並んで、スキンケアも褥瘡予防には非常に重要です。皮膚が清潔でなかったり、乾燥していたりすると褥瘡になりやすく、悪化させる要因にもなります。

患者さんのご家族が日常的に行うスキンケアの1つが入浴です。入浴は、清潔を保つと同時に、血行促進やリラックスの効果も得られます。刺激の弱いタイプの洗浄剤を使用し、あまりこすらないように気を付けながら体を洗いましょう。浴室からあがったあとは、丁寧に水分をふき取ることが大切です。水分が残ったままになると皮膚がふやけ、そこから褥瘡ができやすくなってしまうからです。耳や手足の指の間、陰部、お尻など、肌が入り組んだり、触れ合ったりしている部分は水気が残りやすいので、柔らかいタオルでしっかりと拭いてください。その後は、皮膚の乾燥を防ぐために、時間をあけずに保湿剤をぬります。

排泄時のスキンケアはこすらないことが肝心

スキンケアでもう1つ大切なのが、排泄時のケアです。尿失禁、便失禁は陰部またはお尻の皮膚を刺激し、皮膚トラブルを招きます。まずは、尿や便が皮膚についたままにならないようにすることが大原則です。排泄後はすみやかにトイレットペーパーや、市販のお尻ふき等できれいにしましょう。その時、こすり取るように力を入れると、皮膚を痛めてしまうことがあります。簡単に汚れが取れないようでしたら、市販の清拭剤(せいしきざい)をトイレットペーパーにしみこませ、軽く抑えるようにしてふきとってください。

尿失禁のある場合は尿取りパッドなどを使い、尿が広範囲に広がらないように工夫する方法もあります。医師や看護師に相談し、正しい位置に当てましょう。便失禁のある場合は、肛門周辺にパウダー状の皮膚保護剤を散布したり、水をはじくクリームやオイルを塗ったりするのも一法です。
排泄後の陰部洗浄は、毎回行うと皮膚がふやけてしまうため、できれば洗浄は1日1~2 回にとどめたほうがよいとされています。

なお、実際に褥瘡ができてからのケアについては、原則として医師や看護師が行うことになります。ただ、症状が軽いうちや、医師が認めた場合については、ご家族がケアをすることもあります。まず、患者さんに触れる前に必ず手を洗って手袋を着け、患部が見えるように体位を変えます。そして、38度程度のぬるま湯を使い、無理のない範囲で褥瘡の周りの皮膚を洗い流しましょう。洗浄後は、医師が処方した薬を正しくぬり、ガーゼなどの被覆材で保護します。すべて作業が終わったら、十分に手を洗ってください。
褥瘡が軽いうちに正しいケアを行えば重症化を防ぎ、患者さんのQOLを守ることにつながります。

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