【トピックス】第30回サイコオンコロジー学会総会・第23回日本臨床死生学会総会合同大会レポート

最先端がん治療紹介の編集方針について

「再発転移がん治療情報」では、がん治療に精通した医師の方へのインタビューや学会、患者会ほか独自の取材を通して、新しいがん治療情報を随時ご提供しております。手術、抗がん剤、放射線治療と言った標準治療の中でも最新の治療法や、免疫療法や漢方など注目の治療法を取り上げていきます。また、このサイトでは特に進行がんやがんが再発・転移された方に有用と思われる情報を掲載していきたいと考えております。
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本サイトでは、再発・転移がんの治療を対象としたトピックをどなたにも分かりやすくお伝えし、治療を必要とされる患者様へ新しい選択肢をご提供したり、前向きに治療に取り組むお手伝いが出来るサイト作りを目指しております。

公開日:2017年11月30日

死までの生を生きる

10月14、15日に東京都内で第30回サイコオンコロジー学会総会と第23回日本臨床死生学会総会の合同大会が開催されました。「死までの生を生きる」をテーマに、「死」と「生」についての数多くの研究成果が報告されました。

[会長講演から] 自分の人生を振り返る

合同大会の会長を務めた、埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科の大西秀樹教授は会長講演で、自身の人生を振り返り、幼少期に身近な人が亡くなって初めて「死」に触れた体験、医師として「死」に接してきた経験などについて述べました。

大西教授の患者の一人で、認知症の女性Aさんは、夫の献身的な介護を10年以上にわたって受けていました。Aさんの夫は、病院では診てもらえなくなった妻を終の棲家となる施設に入所させました。その後、大西教授は夫のメンタルケアも担当することになりました。診察を予約していた日にAさんの夫は来ませんでした。代わりにAさん夫婦の娘が診察室に来て、父(Aさんの夫)が亡くなったことを知らされました。

この経験から大西教授は家族ケアの難しさを痛感したといいます。大西教授は「私が家族ケアに携わり続けているのは、Aさん家族と同じことが常に起こりうるからです。これまでにご家族に死なれてしまった経験が私には二度あります」と述懐しました。

講演の最後に、大西教授は末期すい臓がんの患者さんが描いたというきれいな絵を紹介し、「この患者さんはどうして人生の最後に絵が描けたのでしょう」と会場に問いかけました。「その答えは、まず苦痛が軽減されたからです。体の痛みだけでなく、心の痛みも取り除くことが重要です。

また、末期すい臓がんの患者さんが自力で移動することはできないので、ご家族の応援、支援も必要です。それに医療者の援助が重要になります」と締めくくりました。

[シンポジウムから] 専門家が死と向き合う

シンポジウム「がんと死生学」では、がん研究会がん研究所の北川知行名誉所長が「天寿がん思想」を、また、慶應義塾大学精神神経科/緩和ケアセンターの藤澤大介講師は「生きる意味とmeaning-centered psychotherapy」をそれぞれテーマに講演しました。

「天寿がん思想」は北川名誉所長が25年ほど前に提唱した概念で、「人を安らかな死に導く超高齢者のがん」という意味です。当時、高齢化社会の進展に伴い、高齢・超高齢のがん患者さんが急増していました。しかし、これらのがん患者さんをどのように治療すべきかについて十分に検討されておらず、がんは「死病」であり、「末期にはひどい苦痛を伴う病気」と考えられていました。

また、患者さんは心身にダメージをもたらす治療を受け、悲惨な状態で最期を迎えました。そんな状況に希望となる考え方が「天寿がん」でした。「天寿がん」によって、患者さんが不必要な恐怖を持たずにがんと付き合うことができるようになりました。また、無益な治療を受けなくてもいいという解放感も醸し出されるようになりました。

「天寿がん」を受け入れてもらうために「天寿がん思想」も生まれました。
■天寿がん思想

  • ・人は天寿を授かっている
  • ・安らかに天寿を全うすることは祝福されるべきことである
  • ・超高齢者のがんは、長生きの税金のようなものである(長生きすればがんになるのは当然のこと)
  • ・超高齢者のがん死は、人の一生の自然な終焉の1パターンである
  • ・天寿がんなら、がん死も悪くない
  • ・天寿がんとわかれば、攻撃的治療(体にダメージのある治療)も無意味な延命治療も行わない

北川名誉所長は「当時と比べてがんに対する考え方や状況が変わってきました。まず、がんは治せる病気という理解が広まり、緩和療法の進歩で疼痛が制御できるようになってきました。また、尊厳死や自然死を重んじる考え方も出てきました。このような状況の変化によって、天寿がんを受け入れる基盤が広くなったと考えられます」と強調しました。

藤澤講師は、「臨床において最も高頻度に現れるスピリチュアル・ペインの一つが『人生の意味の感覚の喪失(生きていることに意味を感じられないこと)』」と指摘し、meaning-centered psychotherapy(人生の意味に焦点を当てた精神療法)の有用性について説明しました。これは、米国スローン・ケタリングがんセンターで開発された、進行がん患者さんの生きることの喪失感や心理的苦痛に対して有効性が証明された精神療法です。

藤澤講師によると、meaning-centered psychotherapyは、体験(愛、自然、芸術、人間関係など、さまざまな体験)、態度(苦しみ、限界、不確実な未来などに対して選択すること)、創造(仕事、子育て、責任、創作など何かを生み出すこと)、歴史(自身、家族、コミュニティーの経歴や歴史に見出す人生の意味)の4項目から生きる意味を見出す治療法です。

この4つの観点から質問によって、患者さんの人生の背景にあるテーマをあぶりだし、それを統合する手助けをします。病気などのマイナスなものを障壁としてとらえるのではなく、生きていくチャンスに変え、大切な人、目標、役割などに目を向けることを重視します。

藤澤講師は「治療者は、自分も患者さんと同じ船に乗っている同乗者の一人というスタンスが大事。比較的簡易な質問で会話の糸口をつかむという意味では医療者や支援者にとっても有用な方法になるのではないか」と見解を述べました。

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