【トピックス】がん患者さんのフィットネス普及活動に広がり

最先端がん治療紹介の編集方針について

「再発転移がん治療情報」では、がん治療に精通した医師の方へのインタビューや学会、患者会ほか独自の取材を通して、新しいがん治療情報を随時ご提供しております。手術、抗がん剤、放射線治療と言った標準治療の中でも最新の治療法や、免疫療法や漢方など注目の治療法を取り上げていきます。また、このサイトでは特に進行がんやがんが再発・転移された方に有用と思われる情報を掲載していきたいと考えております。
がん治療に関するニュースや情報サイトは他にもたくさんありますが、再発・転移がんに特化したものは少なく、また、毎日更新される膨大な情報をチェックし、ご自身の治療に役立つものをピックアップしていくことは容易ではありません。
本サイトでは、再発・転移がんの治療を対象としたトピックをどなたにも分かりやすくお伝えし、治療を必要とされる患者様へ新しい選択肢をご提供したり、前向きに治療に取り組むお手伝いが出来るサイト作りを目指しております。

公開日:2018年3月30日

がんを抱えながらアメリカで資格を取得

がん患者さんが運動(フィットネス)で体力をつけ明るく過ごしながら社会復帰を目指すがんのリハビリテーションが東京と名古屋を中心に少しずつ広がり始めています。がん患者さんやがん経験者が運動を始めるきっかけづくりをサポートしようと、がん経験者らががんフィットネス教室を開催しています。その中心になっているのが一般社団法人キャンサーフィットネスの代表理事の広瀬眞奈美さん。

広瀬さんは9年前、乳がんの手術を受けました。手術に耐えるための体力をつける目的で手術までの待機期間中、毎日ランニングをしました。走ることでフィジカル面だけでなくメンタル面も鍛えられたといいます。そんな経験から、退院後もリハビリテーションとして運動を続けるつもりで情報を集めましたが、これといったものがありませんでした。「元の自分に戻りたいという一心で、リハビリテーションができるところを探しました」と振り返って言います。

ある日雑誌のページをめくっていたら、アメリカで行われている「がん患者さんの運動療法」を紹介する記事が目にとまりました。「これは、アメリカに行って勉強してインストラクターの資格を取るしかない」と決心。渡米する前にまず国内でインストラクターの資格を取得しようと、抗がん剤の治療を受けながら専門学校に通いました。その後、渡米して、「Moving For Life」という団体が主宰する「がん患者のための運動療法」を学び、認定インストラクターの資格を取得しました。

帰国後はブログで自分と同じように運動したくてもその方法がわからないというがん患者さんやがん経験者に呼びかけ、毎月フィットネスを指導することにしました。最初は乳がんを対象にしていましたが、そのうち、婦人科がんやほかのがん種も増えてきました。さらに活動を組織化して全国に普及させようと、4年前に一般社団法人を設立しました。

術後1年未満の人の運動からチアダンスまで

がんと診断されて精神的なダメージを受けると元気に体を動かす気になれません。手術をすると切除した部位の筋肉だけでなく、広い範囲で筋力が弱くなります。さらに抗がん剤治療や放射線療法の副作用で活動性が低下します。

自らもそんな体験をした広瀬さんは「乳がん、大腸がんの再発予防に運動が有効であることを示すエビデンスが報告され、主治医から適度な運動をするように勧められても、何から始めたらいいのかわからない人も多いと思います。そんな人たちのお手伝いができれば」と、運動指導士、理学療法士、がん専門医、精神腫瘍科専門医、薬剤師、看護師などと共同で安全を最優先した運動プログラムを作りました。術後間もない人のための運動からチアダンスまで、さまざまなクラスがあります。

キャンサーフィットネス教室では、まず、がんと運動についてのレクチャーがあり、参加者の簡単な自己紹介などで場が和んだところで、60分のプログラムが始まります。準備運動に、呼吸法を取り入れ、心身がリラックスしていくのがわかります。プログラムが始まり、音楽に合わせて体を動かしていきます。

最初はゆったりとした曲で体をゆっくり動かしながら、有酸素運動に入っていきます。徐々にテンポの速い曲になり、心拍数を高める運動に変わっていきます。そして、曲はまたゆっくりしたテンポになって徐々に心拍数を下げていく運動に切り替わっていきます。

途中でセラバンドなどの道具を使って、筋トレもします。体が温まったところで、ストレッチ運動に入ります。最後に横になって、全身の力を抜いて、呼吸を整えます。癒しの曲が流れる空間で、心身が不安や悩みから解き放たれていく感じがします。

がん患者さんは治療が終わっても、その先もがんとの付き合いは続きます。広瀬さんは、体とこころの健康管理、体力作りの方法などセルフケアを学ぶ場が必要と考え、3年前、ヘルスケアアカデミーを併設しました。専門家による講義を通してエビデンスに裏付けられた正しい知識を身につけることができます。「減量と栄養の勉強会」やリンパ浮腫のセルフケアの指導も行っています。

行政や民間スポーツクラブなどとの連携も視野に

キャンサーフィットネスの活動がインターネットや口コミを通じてがん患者さんの間で知られるようになりました。現在の会員は約500人で、ほとんどが女性です。会員の8割がキャンサーフィットネスのホームページから参加を申し込んできます。中には、参加の申し込みをして、しばらくたってキャンセルし、また思い直して参加する人もいます。広瀬さんは、不安を抱え、迷いながら決心する気持ちで参加してくる人を優しい気持ちで迎え入れます。

現在、キャンサーフィットネスの活動は東京のほか、名古屋市立西部医療センターの医療チームと連携して行われています。3月から、国立病院機構名古屋医療センターでもフィットネス教室がスタートしました。

広瀬さんは、今後は行政や民間のスポーツクラブなどとの連携も視野に入れがん患者さんのフィットネス教室を普及させていく考えです。また、がん経験者が資格を取得できるキャンサーフィットネス認定インストラクター養成コースもあり、現在3期生を受け付けています。

「1人でも多くのがん患者さんやがん経験者の皆さんに10分でも15分でもいいので自分にあった運動を見つけてほしいと思います。そして、最後まで元気に自分の足で立って生きていきましょう」と広瀬さんはエールを送っています。

一般社団法人キャンサーフィットネスのホームページ:http://cancerfitness.jp/