【トピックス】多発性骨髄腫治療の最新知見

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公開日:2017年7月31日

多発性骨髄腫は骨髄を病巣とした形質細胞のがんで、悪性化した形質細胞が異常に増殖し、骨病変をもたらします。国内の患者数は約1万8,000例(2014年厚生労働省患者調査)と報告されています。今年、治療薬イキサゾミブの製造販売が承認され、治療の選択肢が広がり、希少がんでも病気との共存が可能になりつつあります。

そうしたなか、6月20日、メディアセミナー「多発性骨髄腫に関するメディアセミナー ~多発性骨髄腫の最新の知見と、新薬イキサゾミブについて~」(武田薬品工業)が都内で開かれました。多発性骨髄腫に詳しい日本赤十字社医療センター骨髄腫・アミロイドーシスセンターの鈴木憲史センター長が多発性骨髄腫の病態や治療などについて講演しました。

血液がんの一種、多発性骨髄腫

ヒトの体の中には、体内に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除するために抗体をつくる、形質細胞という細胞があります。この形質細胞ががん化したものが難治性の血液がんである多発性骨髄腫です。主な症状は骨病変や腎障害です。患者さんは高齢者が多く、長期治療が必要になります。

60歳以上では、骨髄腫細胞(がん化した骨髄の細胞)はあるが無症状(MGUS)の人が国民の1%程度存在するといわれています。そのうちの一部の人が症状がないままM蛋白(異常免疫グロブリン)が増えた状態のくすぶり型多発性骨髄腫に移行します。

MGUSは年1%程度、くすぶり型多発性骨髄腫の人は最初の5年間で10%程度が、症候性多発性骨髄腫に移行します。骨病変(bone disease)、高カルシウム血症(calcemia)、腎障害(renal impairment)、貧血(anemia)のどれか一つでも症状が出ている場合に症候性多発性骨髄腫と診断されます。症候性の多発性骨髄腫になって初めて、治療の必要性が出てきます。

出典:国立がん研究センターがん情報サービス
http://ganjoho.jp/public/cancer/MM/

骨髄腫細胞によって刺激された骨を溶かす細胞が骨の組織を破壊して、骨痛や病的な骨折などの骨疾患、脊髄圧迫による麻痺などが起こります。また、骨が破壊されることで血液中にカルシウムが溶け出し、高カルシウム血症になります。また、骨髄腫細胞が無制限に産生するM蛋白によって、腎障害が起こります。

骨髄の中で増殖した骨髄腫細胞によって、正常な血液細胞がつくられず、貧血による息切れ、だるさや、白血球減少に伴う感染症、血小板減少による出血傾向などが生じます。ただ、多発性骨髄腫は病気が進行するまで症状が現れない場合があるので、早期診断が難しい病気です。また、無症状のまま状態が安定している人もいるので、いつから治療をするか判断することが重要です。

「多発性骨髄腫の診断ではM蛋白の存在が手掛かりになりますが、一般の検診では免疫グロブリンの検査をしないので、検診では意外と見つからないのです」と鈴木センター長。しかし、一般の人でM蛋白の有無を知る方法があります。「一般の検診でも総蛋白とアルブミンの測定はします。

そこで、総蛋白からアルブミンを引き算して5g以上あるようだと、M蛋白がある、と判断していいと思います」と鈴木センター長は話します。M蛋白の存在が確認でき、腰痛がある場合は、より詳細な検査を行います。骨髄穿刺によって、M蛋白の性質を確認し、同時にX線、CT、MRI、PETなどの検査で骨がどれくらい障害されているかを判断し、総合的に多発性骨髄腫を診断します。

進歩する多発性骨髄腫の治療

多発性骨髄腫の治療は、基本的には大量化学療法と造血幹細胞移植が主体です。あらかじめ、造血幹細胞を採取して保存し、大量化学療法後に体内に戻すと、正常な骨髄細胞が増えます。化学療法では、プロテアソーム阻害薬(PIs)や免疫調整薬(IMiDs)などを組み合わせて治療が行われます。米国のNCCNのガイドラインでも、二剤あるいは三剤の併用療法が推奨されています。

多発性骨髄腫は、再発を繰り返すことが多く、治療と休薬を繰り返します。治療のたびに腫瘍細胞の性質が変化し、治療の継続期間が短くなっていきます。「多発性骨髄腫は、初回と2回目に選択される治療が非常に重要です。この段階で適切な薬を選択し、薬の効果を少しでも長く続くようにすることが重要です」と鈴木センター長は強調しています。

治療では注射薬が使われることが多く、週に2回の通院が必要になります。骨に痛みがある患者さんにとって週2回の通院は負担が大きく、介助する家族にとっても大きなストレスになります。患者さんが治療を継続するためにも、多発性骨髄腫治療のベースとなる経口のプロテアソーム阻害薬の開発が求められていました。

そして今年、経口のプロテアソーム阻害薬、イキサゾミブの製造販売が承認されました。「イキサゾミブは、TOURMALINE-MM1試験などの国際的な治験で有効性が認められています。

下痢やおう吐などの消化器毒性があるため、副作用に応じて減量や制吐剤などによるコントロールが必要ですが、通院せずに治療ができるという経口薬の特徴を活かし、仕事をしている患者さんなど、個々の生活スタイルに合わせた治療ができる」と鈴木センター長は期待しています。

近年、多発性骨髄腫の治療にMRD(minimal residual disease)という新しい概念が用いられるようになってきました。MRDは、骨髄の中にどれくらい異常な細胞があるかを示す指標で、MRD陰性の場合は、治療をせずに経過観察をすることができるのではないかと考えられています。

鈴木センター長は「多発性骨髄腫はイキサゾミブを含めた新規薬剤の登場によって、2割程度の人で治癒を目指した治療が可能になってきました。ただし、治癒できない患者さんもまだまだ多いので、有効性、安全性、継続性、利便性のバランスがとれた治療をしていくことが重要です」と講演を締めくくりました。

講演する日本赤十字社医療センター骨髄腫・アミロイドーシスセンターの鈴木憲史センター長

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