【QOL(生活の質)】がんになっても食事を楽しみたい~子宮・卵巣がん編~

公開日:2013年02月01日

シリーズでお伝えしている、がんと食事。今月のテーマは子宮がんと卵巣がんです。子宮がん・卵巣がんの治療後は、腸閉塞や更年期障害のような症状がでることがあり、食生活の改善が必要です。当ページでは、子宮がん・卵巣がん治療後に気を付けたい食事の摂り方や、再発予防で気を付けたいことなどをご紹介しています。

目次

まずは腸閉塞を防ぐ食べ方(食生活)を

子宮がんと卵巣がん、どちらのがんも第一に気をつけたいことは、腸の癒着による腸閉塞予防です。子宮や卵巣を摘出手術したあとは、空洞となったスペースを埋めるために近くにある直腸や大腸、小腸などの位置が移動します。その結果、腸とほかの臓器がくっつき(癒着)、腸の中を食べ物が通りにくくなって残ってしまう腸閉塞が起きやすいのです。

腸の癒着による腸閉塞は、手術から5年以上経過してからも発生する可能性があります。しかし、適切な食生活を送ることで、ある程度は予防できると言われています。子宮・卵巣がんの手術を受けた患者さんは、常に食習慣を意識する必要があると言えるでしょう。
腸閉塞を予防するには、食べ物が消化されやすいようにすることが大切です。よく噛んで食べるのはもちろん、場合によっては一回あたりの食事量を減らして、食事の回数を増やすなど、食べ方の工夫が求められます。
海藻やきのこ、こんにゃく、ごぼうなど食物繊維の多い食品は、一般に体によいイメージがありますが、腸閉塞予防には逆効果です。腸の中で消化されにくいため、できるだけ控えるようにしたほうがよいと言われています。

女性ホルモンとの関係を意識した食事(食生活)

子宮がんや卵巣がんの患者さんは、食事と女性ホルモンとの関係も意識する必要があります。

例えば、閉経前に両側の卵巣を摘出した場合は、女性ホルモンが減少して更年期障害に似た症状が起こることがあります。これを外科的閉経といいます。女性ホルモンは、生殖機能や女性らしい心身を作り上げることで知られていますが、実際には全身の健康に深くかかわっています。骨粗しょう症を防いだり、血中コレステロールの状態を適正に保って動脈硬化を予防する作用などもあるのです。

したがって、卵巣の摘出手術を受けた患者さんは、骨粗しょう症にならないようにカルシウムを多く含む乳製品や、ビタミンDが豊富な青魚などを積極的に取るほか、コレステロールなど脂肪分の多い食品を過剰摂取しないことなど食生活パターンの改善が推奨されています。

青魚は、EPAやDHAなど「n-3系」と言われる脂肪酸も含んでいることからも、子宮がんや卵巣がんの患者さんに適していると言われます。n-3系脂肪酸は、女性ホルモンのバランスを整え、血中のコレステロールを低く保つ作用があるからです。
また、それらの食品を意識的に摂取すると同時に、飲酒やタバコも控えて日常生活で身体にかかるストレスを減らすことも大切です。

食品単一より、複数を組み合わせたメニュー

ただ、子宮がん、卵巣がんによいとされる食品を摂ることが大切とはいえ、バランスのよい献立であることが大前提です。青魚や乳製品を大量摂取したり、脂肪を含む食品を極端に避けてしまっては、合併症や再発予防以前に全身の体力が衰えてしまいます。米国対がん協会が2003年に発表した報告書「有効性と害に関するグレード判定」では「食品は単一で食べるより、適量を組み合わせたほうが効果的」としています。

野菜と果物などとうまく組み合わせて、栄養バランスが崩れないようにしましょう。
例えば、たっぷりの白菜やネギを含んだイワシのつみれ汁や、アジやサバなどと青菜の和え物。もしくは、イワシとトマト、ブロッコリーなどにチーズをかけたオーブン焼きなど、身近な食材で様々なバリエーションを作ることができます。乳製品を摂る時は、果物とヨーグルトを混ぜたり、オレンジなどの柑橘類と青菜、牛乳などをミキサーにかけたスムージーやジュースにしてもよいでしょう。

再発や合併症予防には体重コントロールも重要

再発や合併症防止の観点では、体重のコントロールも重要になります。肥満は女性ホルモンのバランスを崩し、子宮がん、卵巣がんのリスクを高めると言われています。また、合併症として発生する下肢リンパ浮腫(下半身のむくみ)は、肥満になると悪化しやすくなります。皮下脂肪が増えることによって、下腹部やおしりにあるリンパ管が圧迫されるからです。下肢リンパ浮腫は、手術後10年が経っても起こることがありますから、標準体重から極端に増えないように注意が必要です。

成人女性が1日に必要とするエネルギー量である1600キロカロリーを基準に、体重が増えすぎるようであればご飯の量を減らすなどして調整しましょう。以下の計算式で自分の標準体重を割り出すと、体重管理の目安になります。
標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22

なお、療養中の食事については、消化の良いものを中心に、バランスよく食べていればさほど心配はありませんが、使用している薬や治療計画との兼ね合いを考えなければならない場合もあります。例えば、血栓予防のために「ワーファリン」という薬が処方されている方は、ビタミンKを多く含む食品(納豆や青汁、ほうれんそうなど)を控える必要があります。気になることがあったら、必ず主治医と相談するようにしましょう。

ポイントまとめ

  • 腸閉塞の予防には、よく噛んで食べる、食事の回数を増やすなど、食べ物が消化されやすいように工夫することが大切。海藻やきのこ、こんにゃく、ごぼうなど食物繊維の多い食品は、できるだけ控える。
  • 卵巣の摘出手術を受けた後は、骨粗しょう症に注意しカルシウムを多く含む乳製品や、ビタミンDが豊富な青魚などを積極的に摂り、脂肪分の多い食品は過剰摂取しない。
  • 野菜と果物など、複数をうまく組み合わせて、栄養バランスが崩れないメニューを。
  • 肥満は女性ホルモンのバランスを崩し、子宮がん、卵巣がんのリスクを高めるため、体重のコントロールも重要。

コラム:がんと食事

がん経験者の再発・転移予防のための明確な食事療法、万能な健康食品などはありませんが、体力の維持やその他感染症などを防ぐために、栄養が不足しないバランスのよい食事を心がけることは大切です。しかし、手術、放射線治療、抗がん剤治療など、治療の影響で食欲が低下する場合もあります。食事について不安があるときは、担当医や栄養士などに相談し、無理に食事をすることにこだわらないことも大切です。

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